#1 この夜が終わる前に。

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この夜が終わる前に。深夜1時。夜と朝の境目がわからなくなり始める時間帯。8月は終わりを告げようとし、夏も終わりの声が聞こえてくるような気がする。涼しいかな、暑いかな、そういえばクーラーをつけたまま寝るときの温度調整の仕方は、毎年うまくいくわけにもいかず、ずいぶんと高度な技術が求められているような気がする。

何かが終わりを告げようとするとき、恐れていた一歩は自然と前に進み出す。正確には、きっと倒れようとして、仕方なくというか、自然と足が前に出るような仕組みのこと。「将来にむかって歩くことは、僕にはできません。将来に向かってつまづくこと、これはできます。一番うまくできるのは、倒れたままでいることです」と、カフカは語る。

駅では話声に耳をそばだてる。「盗み聞き」と言われてもまあ仕方はないのだけど、「さあ聞きましょう」と聞き手にならないことで聞けることも多いのだと感じる。最近あった職場でのこと、家に帰ってからの密かな楽しみのこと、うまく行かない恋愛のこと。「うるさいなあ」と思って聞くよりは、気分がいいでしょう?

「SNSのタイムラインの心地よさは、自分自身で決められるもの」なんて投稿を以前に見たけれど、そう、「何を自分はフォローしようか」と考えることは、自分にとって居心地のいい環境を考えることの、大事な一歩。

「人はSNSで一瞬にして世界中の人とつながれるのです」は、ただいなる嘘。一瞬でつながることはできても、一瞬でつながった気分になることは永遠にないから。