就活の前に、”働く”を。 「就職(しない)合同説明会」を通して見えた、「働く」とは?

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先日の3月1日、就職活動が解禁されました。

多くの大学就活生が企業の合同説明会へ行ったり、キャリアセンターへ行ったりと一気に就活ムードの高まるなか、都内でこんな合同説明会が開催されました。

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その名も、「就活スタート直前!就職(しない)合同説明会」

このイベントは昨年出版された、「働くって、なんだろう」という問いを、100人に聞き一冊にまとめた本『We Work Here』をきっかけに開催されているもの。今回は Nagatacho GRID の地下一階にあるイベントスペースで開催されました。

今年の1月に初めて同趣旨のイベントが開催され、今回は2回目。前回は初回だったのにも関わらず多くの方が集まり、今回はその盛り上がりを受けて前回の2倍以上の方が。学生・社会人合わせて80名近くの方が集まっていました。

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トークセッション時の様子

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『We Work Here』東京のあたらしい働き方100

「就職(しない)合同説明会」とはなにか

「就職(しない)合同説明会」というタイトルを見て、「就職しないって、どういうことだろう?」と戸惑われた方もきっと多いかもしれません。しかしこれは、就職することを否定するイベントではないとのこと。イベントページにはこんな記載がありました。

「就職」の前に「働く」をまず考えてもらうこと。

それが、本人にとっても、社会にとっても、会社にとっても、重要なのではないでしょうか。

というように、このイベントは「 “働く” について考える」ことをテーマとしたものでした。そんないわゆる就職活動や合同説明会とはちょっと変わった、「就職(しない)合同説明会」では、一体何が行われていたのでしょうか。

木こりから理学療法士の方まで?!実に多様な社会人による「就職(しない)ブース」

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イベントの前半は、「就職(しない)ブース」という職業別の相談ブースが設けられ、時間になるとさっそく社会人のところへ多くの学生が話しかけに行っていました。

当日ブースを担当してくださった社会人の方は、

・きこり

・シェアオフィス運営

・自由大学運営

・本の編集/村役場非常勤

・ドリームマネージャー(社員のモチベーションアップ)

・オフィスの内装プロデュース

・ガチノマドワーカー(エンジニア)

・理学療法士

・一般財団法人 事務局スタッフ

と、実にさまざま。

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出展される社会人は予約制ではなく、当日参加する学生と同じようにフラっときて無料でブースを出展できることに、「こんなにフリーなの?」と驚かれている方も。自由度でいうと学生についても同様で、自分の興味に応じてどこのブースへ行ってもよく、服装もリクルートスーツを着てくる必要のないイベントでした。

会場にはゆったり話せるこたつブースもありました。

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相談ブースを訪れた後の学生からは、「自分の悩みを聞いてもらえて、心が晴れた気分です」「自分の研究していることとの共通点があって、ビリビリきてました(笑)」など、「すでに来てよかった気持ちです」とおっしゃる方も。社会人の方も楽しそうに話されている姿が多く見られました。

「リスクがなければFUNはない」働き方研究家・Susanne氏に聞く、「いい働き方」とは?

イベントの後半は、「働き方研究」をされている北海道大学准教授の Susanne Klien さんのキーノート・スピーチで始まりました。

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「働くとはなにか?」という問いに対して、彼女はこう答えます。

 常にチャレンジに直面することかな。

 それは自分のペースで、ほどほどで、無理しないままにそれをやるっていうのが長期的にもつかな、という感じでやっている。

 そういう意味で、「マイペースを保つように」、というのがもしかしたらポイントかもしれない。

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「チャレンジに直面すること」と聞くと、「困難に直面する」ということが連想され、あまりいいイメージはないかもしれません。しかし、彼女の場合は困難を頑張って乗り越えるのではなく、「どうやったら楽しめるか?」と乗り越えていくような、ポジティブな姿勢が印象的でした。

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彼女がくり返し言っていたのが、「No risk, no fun」=「リスクがなければFUN(=楽しさ)はない」という言葉。たしかに、いくつもの仕事に関わったり、国境や世代を越えて働くことは、ある種のリスクかもしれません。それなりの労力も必要とされます。

しかし、Susannne氏にとって、それはポジティブなこと。彼女にとっての「いい仕事」とは、今までにあったことのないような人に会うことも含めて、多様なシーンの仕事に関わっていく中で成長できることだといいます。

そしてその中で彼女が大切にしているのが、ワクワクやいい緊張感といった、「FUN」の部分。「楽しさ」こそが彼女を「いい仕事」へと向かわせる原動力であり、これからの私たちの働き方にもひとつのヒントになるのかもしれません。

自分に正直にまっすぐ、時には寄り道しながら道を切り拓いているSusanneさんの一言ひとことに、気づけば夢中になって聴き入っていました。

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楽しそうにジョークも交えて話すSusanne氏。

笑顔を見せながら話に聞き入る学生の姿が多く見られました。

トークセッション:ゲスト5人に聞く、それぞれの「働く」とは

Susannne氏によるKeynote Speechを終えて、イベントの最後を飾るのは、『We Work HERE』の本の中にも登場されている5名のゲストによるトークセッション。

それぞれのこれまでの人生から見えてきた働くこと、仕事についての話が交わされました。

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5名のゲストは以下の通り。

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・岡島悦代さん (自由大学学長)

大学4年時から桑沢デザイン研究所でビジュアルデザインを学ぶ→デザイン事務所、レコード会社、銀行等で雑誌やウェブコンテンツの企画・製作に携わる→自分が携わったコンテンツの反応を直接見たい欲求に駆られ、地元でカフェを立ち上げる→『自由大学』の講義をいくつか受講し、運営チームへの参加を経て2015年6月に3代目の学長に就任。書籍『TRUE PORTLAND』の現地取材や編集を担当

「自由大学ホームページ」 https://freedom-univ.com

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・佐別当隆志さん (会社員・一般社団法人事務局・シェアハウス運営)

広告代理店を目指し就職活動をするも就活のありかたに疑問を感じ中断→インターンシップ先の株式会社ガイアックスにそのまま就職、創業初期のメンバーとして事業部長、役員とマネージメント業務を主に行う→結婚を期に新しいタイプのシェアハウス「ミライエ」を作り運営開始→会社に勤めつつ、業務の一環として一般社団法人の事務局として、シェアエコノミーについての啓蒙活動を行う

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清田直博さん (『We Work HERE』編集長・みどり荘メンバー)

 大学卒業後、戦車等を扱う重機メーカーに勤務。退社後にデザインを学ぶ。メディアサーフコミュニケーションズ株式会社を経て独立。現在東京都檜原村在住。村の非常勤職員をしながら、フリーランスで都心の仕事もしている。

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・望月DUKE暢彦さん (自由大学教授・会社員)

 大学在学中にモデルとしてデビュー、地元のテレビなどに出演→大学卒業後、大手電機メーカーに入社→28歳でベンチャー(イベント企画)経営に転身→友人の会社の保証人になり、そこから会社が傾く→大手通信系IT企業に転職し新規事業開発・社内ベンチャーの立ち上げに携わる→会社に勤めるかたわら、自由大学で教授として社内起業学ほかの講義を持つ

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・小柴美保さん (『We Work HERE』発行元・編集)

 インデペンデントシンクタンク「Mirai Institute」主宰。その一環として未来の働く場としてのワークスペース「みどり荘」をオーガナイズ。イギリスや京都で学生時代を謳歌し、投資銀行で日本株の取り扱いに従事。2011年に退社し現職に至る。

ゲストそれぞれのこれまでを振り返るお話しの中には、数々のエピソードがありました。心に残っているのはなぜか上手くいったときの話ではなく、挫折や失敗などといった、上手くいかなかったときの話。

「働くって、一言であらわすと、なんですかね?」

そんなリアルな話を通じて、自分もこれからどう人生を歩んでいこうかということを、気づけば考えていました。

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トークセッション後の会場からの質問で、最後の学生から出たのは、「働くって、一言であらわすと、なんですかね?」という素朴な質問。

ゲストからはこんな答えが返ってきました。

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岡島さん)

 生きることを楽しむ方法のひとつ、そして自分は何者かを知る術でもある、と思います。

佐別当さん)

 「働くということは生きることなんじゃないか」と、いろいろな意味で。

 それは「ごはんを食べる」っていう意味でもあれば、「自分自身の人生を生きる」っていうことでもある。僕は「働く」っていう単語を「play」、遊ぶっていう意味の「play」を「働く」って呼んでるんですけど、「仕事だけ働く」っていうのは、ちょっと意味が分からないなと思っていて。

 スポーツ選手ってみんな「play」してるわけじゃないですか。それで仕事しているわけであって。”プレイフルワーキング”とか、”プレイフル○○”とかっていうコンセプトを出している人がいるんですけど、すごいそれいいなと思っていて。基本的にいつもplayすればいいなと思っているので、何仕事してんだよってよく怒ってるんですけど、「もっと遊べ」と。それでよく、社内で遊び過ぎって言われてるんですけどね(笑) だけどそれこそ「超仕事してること」なんじゃないかとよく思っているっていう感覚ですね。

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清田さん)

 働くとは、究極の自己満足というか、自己満足の中にちゃんと他者の幸せも入っているということ。そこが重要なんじゃないですかね。

望月さん)

 働くって、楽しいこと。なので、この間何歳まで働くつもりですか?と聞かれたんですが、たぶん死ぬまで働くと思いますよ。なんで楽しいかっていうと、新しい人と、出会える、いろんな人と出会える、新たな刺激が生まれるっていうのは、この年になっても、毎日あるから。

「他の社会人からも、せっかくなので一言いただけませんか?」と聞いたところ、参加された社会人の方からは、「働くとは?」という問いに対して、こんな答えが返ってきました。

機能性食品の仕事をされている男性の方)

 働くとは、夢の実現のプロセス、と私は思っている。夢って変わってくるんですよね。今の若い人の夢と、僕の60代になっての夢は違ってくるんだけれど。でもそれでいいと思うんで。

 僕はよく学生さんにいうんです。「夢って2種類あるで」と。ひとつは、寝てみる夢。みなさん毎日みるやつですね。(笑) もうひとつは実現する夢があるんですね。だから夢を実現するプロセスが働くってことかなって、今のところ思ってます。

ハローワークで学生の就職活動支援をしている女性)

 私が考える働くとは、自分を活かして、人の役に立つことかなと思ってます。いろんな方に出会って、いろんな価値観にふれていただきたいなと思っています。

 私は2年間で6000人くらいの学生さんとお話ししてきましたけど、今まで自分がやってきたことを、しっかり自分で認めてあげて、それを表現してもらいたいなと。

 みんな自信がない、自信がないっていうけど、そんなことないです。みんな本当にいいところいっぱいあるから、それを自分でしっかり分かってほしいなと思ってます。今日しゃべれてよかった。(笑)

「自分がどう生きたいか」について考えるきっかけになればいい

最後に、今回のイベントを主催された小柴美保さんからの、こんな言葉で締めくくられました。

 「働くとはなにか」を考える前に就職説明会が始まることが多いと思います。つまり、自分の人生どうなっちゃうんだろうとか、あんまり考えるすき間もなく、そのレールに乗せられちゃうっていうのがあって。この本(『We Work HERE』)も、そういう一般的な正解みたいなものにアンチでいきたいねという気持ちで作っています。

 とはいえ、就職することを否定するわけではなくて。今回のイベントで色々な人の生き方にふれてもらったことを通して、「自分がどう生きたいか」について考えるきっかけになればいいなと思っています今日は来ていただいてありがとうございました。

おわりに

「働くとは何か?」という問いへの答えは、実にさまざま。そんな多様な切り口からの答えから見えたのは、「答えがあるわけではない」ということなのかもしれません。

一見自分とは関係のないように思える社会人の方とお話ししてみることで、思いがけない発見があったり、ゲストによる本音の詰まったトークを聞くことで自分自身をあらためて見つめ直すきっかけになったいい機会でした。