年末年始は新型コロナウイルスにつき帰省することもなく、東京の自宅で本を読んだりNotionを整理したりしながら過ごしています。ゆっくりまとまった時間がとれたことで、身の回りもそうですが、頭の中も整理でき、すっきりとした心持ちです。
せっかく「読んだ本」「気に入った曲や作品」「撮った写真」なども整理したので、文章にもまとめておきたいなと思い、書いています。そのことはじめとして、今回は「2020年読んでよかった10冊」をまとめたいなとおもいます。それではどうぞ。
(今年はちょうど100冊読みました)
上半期読んだ本から5冊
上半期がおわったタイミングで、上半期に読んだ本の振り返りが実はもう終わってました。1年まるまる振り返るのは意外と大変なので、すでに半分仕事を済ましてくれた、半年前の自分に感謝です。
「2020年上半期に読んだ50冊からベスト5冊」は以下のとおりです。
1.『急に具合が悪くなる』(宮野 真生子,磯野 真穂)
2.『SHOE DOG』(フィル・ナイト)
3.『集中力はいらない』(森 博嗣)
4.『暇と退屈の倫理学』(國分 功一郎)
5.『こといづ』(高木正勝)
それぞれの本のコメントや推しポイントについてはこちらの記事にまとめてます。
下半期読んだ本から5冊
では2020年読んでよかった10冊のうち、6冊目以降を順番に紹介していきます。
『SHIFT:イノベーションの作法』(濱口 秀司)
かのUSBメモリーを発明したことで有名なビジネスデザイナー濱口 秀司さんの本です。雑誌『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー(DHBR)』で1年連載してきた内容がまとめられた1冊となっています。雑誌でもチラチラと読みながら面白いなとおもっていたのですが、まとめて一気に読んだらさらに面白かったです。価格が4,000円超と高いですが、一切後悔がありません(笑)。
面白かったのは、本のタイトルでもある「イノベーションの作法」について。
誰も思い付かない「方向」を見つけ出し、実現可能な、意味のある「大きさ」で設計することでイノベーションを起こせるようになります。
バイアスを認識した上で、意図的に壊しにいく。「“イノベーション” は再現性のないもの」とおもっていた自分にとって、とてもインパクトのある気づきでした。イノベーションにも“作法”があるのだと。TEDでも語られています。これも何回も見返すほど面白い。
『岩田さん -岩田聡はこんなことを話していた。』(ほぼ日刊イトイ新聞)
任天堂の元社長、岩田聡さんの言葉をまとめた一冊。岩田さんがやさしく語りかけてくれているような、平易だけれどもおもわずドキッとするような、核心をついた言葉の数々が、この一冊にまとまっています。
つまり、自分たちがすごく苦労したと思ってないのに、妙に評価してもらえるときというのは、放っておいても、どんどんいい結果が出て、いい循環になって、どんどん力が出ていく状態。それが自分たちに向いている得意なこと。そうじゃないことは向いてないことだ、というふうに、わたしはだいたい判断していますね。
けっきょく、自分たちのミッションは、「いい意味で人を驚かすことだ」ということが、すごくはっきりしたんです。「人を驚かす」ということができなければ、新しいお客さんの数は増えないんです。
つまり、才能というのは、「ご褒美を見つけられる能力」のことなんじゃないだろうかと。「なしとげること」よりも、「なしとげたことに対して快感を感じられること」が才能なんじゃないかと思うんですよね。いってみれば、ご褒美を見つけられる、「ご褒美発見回路」のようなものが開いている人。
ちなみに岩田さんがどれくらいすごい人だったのか……については以下の記事を読むとよく分かります。あまりのすごさに震えました。
『風に吹かれて』(鈴木敏夫)
『rockin’on』『CUT』などを創刊してきた音楽評論家・編集者 渋谷陽一さんによる、スタジオジブリ プロデューサーの鈴木敏夫さんへのインタビューをまとめた1冊。
渋谷陽一さんが鈴木敏夫さんに鋭く質問や疑問を重ねていく様が印象的でした。インタビューを終えて鈴木敏夫さんが「ここまで話すつもりじゃなかったんだけど……」と話し戸惑いを見せるほど、濃密なインタビューになっています。ポッドキャストにもインタビュー時の音声が残っているので、合わせて聴くとなお面白いです。
『好きなようにしてください』(楠木 建)
2020年は一般の人からの質問・相談に対して答えていく本(うまく一言で表したい…)にハマりいろいろと読んでいたのですが、この楠木建さんの本がすごく面白かったです。
「大企業とスタートアップで迷っています」 「30代でいまだに仕事の適性がわかりません」 「キャリア計画がない私はダメ人間ですか?」
みたいな質問・相談に「どうぞ好きなようにしてください」と前置きをした上で答えていくのですが、とにかく回答のキレがいい。
「これは悪い意味で良い質問」の典型です。あなたは根本のところで間違っています。それは、自分のしごとを考える時に、「仕事」ではなく「環境」を評価しようとしているということです。(中略)あなたのいまの考え方は「環境決定論」になっている。ここに非常に単純な勘違いがあります。幸いにして、この方は、実際にスタートアップでアルバイトをしてみて、仕事が面白くてはまっている。実にラッキーです。どうぞ、思いっきり好きなようにやってください。そのスタートアップでの仕事がそのうち嫌になるかもしれませんが、その時はその時で本格的な相談に乗ろうじゃないかというのが結論です。 -「大企業とスタートアップで迷っています」という相談への回答
「面白かった」とおもった箇所にペタペタと付箋をいつも貼っているのですが、「こんな返し方があるのか……」という気持ちでのペタペタが止まりませんでした。
『デザインの周辺』(田中 一光)
最後はこの本。1989年に出版された、日本を代表するグラフィックデザイナー田中一光さんのエッセイ集です。
1980年の初版から10年経ったあとの「あとがき」で、本書を書いたときのことを振り返り、こう綴られている。
恥ずかしい箇所は多々あるとしても、正直にいってこんなに気負ったことはもう書けないと思った。深夜の密室で、灰皿に煙草の吸いがらを山盛りにして悪銭苦闘した、それでもどこか満ち足りたと感じた時間は、残念ながら今の私にはなくなってしまったように思う。
「恥ずかしい箇所は多々ある」「今はもっと明晰で端的でありたいと願う」と本人は綴っているが、多少粗いなりとも(全然粗くはないが)みずみずしい文章の美しさの方が何百倍も際立っていた。
「今朝も地球が廻転し、また一日が過去になった」の何気ない一節。「このように、文を書くということが、ぼくにとって、こうまで辛く感じるのは、ある「構え」があるからではないかと思う」という心情。
「人間が正しいと決めたモノの裏を正面にすえてみる。快適に対する不便、孝行に対する極道、信頼に対する冗談、そうして罪悪のすれすれのネガチブな地点から、翔ぶことのできる発想が生まれるように思う。だから翔ぶのは一人の方がいい。連帯は望めない。」という『SHIFT:イノベーションの作法』にも通じる姿勢。
今ではあまり流通されてなく、レビューらしいレビューも見つからないのが不思議なくらい、良質なエッセイのつまった一冊だった。もし古本屋でもメルカリでも見つけたら、ぜひ手にとって読んでほしい本です。
以上、「2020年読んでよかった10冊」でした。もし気になった本が一冊でもあればうれしいです。2021年も、本とのいい出会いがあるのを楽しみにしています。
ではでは。