Created
June 6, 2019
Tag
Essay
そういえば少し前に、駒沢にある本屋「SNOW SHOVELING」にいってきた。
そこで買ったのは本だけでなく、いろんな方の名言が一枚のカードになったものを合わせて買った。
本屋にはいくつものカードが並んでいて、その中から好きな作家の言葉を選んで買った。選んだのは4つのカード。
買ったカードは自分の部屋の壁に貼って、いつもふとしたときにみている。
そして、壁に貼りはじめてから半年がたつ。
その中でも一番のお気に入りは、これだ。
色に迷う人は迷えばいい。情に狂う人は狂えばいい。この世で一歩でも天に近づけば、自然と天が機会を与えてくれるだろう。
樋口一葉は、24歳という若さでなくなってしまった小説家だ。早くして失った父は、多額の借金を抱えていたため、残された家族3人、苦しい生活を余儀なくされた。借金があることが発覚したために、許嫁には婚約を破棄された。そんな中でもめげずに小説家になることを志し、「奇跡の14ヶ月」ともいわれる晩年のわずか1年あまりの期間で、今世に知られている作品を次々と書き上げた。樋口一葉自身も、情に狂わされたことは決して少なくなかったはずだ。
そんな彼女が上記の「ひとこと」で語るのは、何も自分自身への言葉だけではないだろう。一葉自身が日々みていた、近所の吉原に通う遊女が色に迷いながらもひたむきに生きる様、市井の人のやりきれない思いに振り回される姿。そんな作品でも多く登場人物として取り上げられているような人たちへの肯定と愛が「ひとこと」に込められているのだろう。
「迷い」。「狂い」。そのどちらも避けることはできないのだと、樋口一葉がこの世を去った年を迎えておもう。もちろん「迷い」や「狂い」に向き合うことは、そう簡単ではない。ただ、「迷わないように」「狂わないように」と何かを選択することに、どれほどの意味があろうか。そう諭されているようにもおもう。